ドル・円:75日移動平均線を意識した上昇へ

  • メインターゲット:121.60円
  • サブターゲット:119.00円

バンド・ブレイクアウトはダマシに

先週、ドル・円はボリンジャーバンドの拡大する-2σ(シグマ)(※1)に沿ったバンドブレイクアウト(※2)となる可能性があると指摘しましたが、結局ダマシ(※5)に終わり、現在はサブターゲット(当時は121円50銭)を意識したシナリオとなっています。

10月22日に開催された欧州中央理事会(ECB)後のドラギECB総裁の記者会見で、年末の追加緩和の可能性を強く示唆したことが強く影響しました。10月15日に下ヒゲを形成しましたが、その後は陽線を並べるしっかりとした展開が見られ、一段安を回避した格好となっています。

ボリンジャーバンドでは、+2σに到達しています。バンドがまだ拡大していないことから今後強いトレンドが発生するかわかりませんが、来週末に予定されている日銀金融政策決定会合に向けて、追加緩和期待が高まっていることから121円台を試す展開が見られそうです。10月27-28日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)では金利引上げの可能性は非常に低くなっていることから材料視されることはないでしょう。来週末まではじりじりとしたドル買いが進む展開を想定。来週末までのメインターゲットを75日移動平均線が位置する121円60銭とします。

一方、政府要人の発言などが影響して追加緩和期待が剥落した際には、ドル買いが一服する可能性があります。そのときはボリンジャーバンドの-2σが位置する119円レベルが意識(サブターゲット)されるでしょう。つまり、バンド内で推移(ボックス相場)を想定します。


(※1)σ(シグマ)
 ある一定の確率で値動きが収まりやすいレンジを『σ(シグマ)』と呼び、平均値からみて上のレンジを+1σ、下のレンジを-1σと呼びます。これを2倍したものが+2σ・-2σになります。σ(シグマ)をつないだ線をバンドと呼びます。

(※2)バンド・ブレイクアウト
ボリンジャーバンドの+2σを突破したタイミングで買いを入れるトレンド分析系(※3)の売買手法です。ボリンジャーバンドは-2σで買って+2σで売却するといったオシレーター分析系(※4)の要素を持っていますが、+2σ突破のタイミングで買うというトレンド系の要素も持っているのです。バンドが狭くなった状態すなわちボックス相場からの転換を試す場面では、よくバンド・ブレイクアウトが見られます。

(※3)トレンド分析
上がっているのか、下がっているのか株価の方向性を捉え、価格が上昇している場合、さらに上がることを期待して買う、流れに沿った投資を行うため順張りとも言う。

(※4)オシレーター分析
相場の強弱感を判別する投資の考え方で、価格が上昇すると買われすぎ、と判断して売ることから逆張りとも言う。

(※5)ダマシ
テクニカル分析で買い(売り)サインが出たものの、そのサインとは全く逆に相場が動くことを指す。一つのテクニカル分析に頼るのではなく、複数のテクニカル分析で複合的に判断することでダマシを防ぐことができる。


10月の日銀会合に注目、上下に動く週になるのでは?

ここで、上記でもふれました10月末の日銀金融政策決定会合(日銀会合)に関して軽くご説明します。通常、日銀会合は一ヶ月に1回ですが、今月は2回(10月6~7日、30日)予定されています。6~7日の日銀会合が毎月定例の会合で、30日は半年に一度に開催される会合なのです。

今回はいわば臨時の会合なのですが、経済・物価情勢の展望(展望レポート)を公表することから非常に重要視されているのです。

展望レポートは今後の日本経済の見通しを記していますので、日銀が進める「消費者物価上昇率+2%」の実現時期を巡る大きなベンチマークとなります。

昨年、追加金融緩和(ハロウィン緩和)を実施したのはまさにこの10月2回目の日銀会合だったのです。その日は、世界最大の年金基金である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用方針の変更も同時に発表されたことから、市場へのインパクトは大きいものとなりました。この日一日で日経平均は755円上昇しましたが、これは市場関係者のほとんどが「今回の緩和は無い」と考えていたことも大きな要因です。つまりサプライズだったわけです。

今回気をつけなくてはいけない点は、足元の市場は今回の日銀会合で追加緩和を実施するのではないかとの期待感を高めていることです。サプライズ感に乏しいことから、仮に追加緩和を発表しても材料出尽くしで利益確定のドル売りに押される可能性があります。そして、追加緩和は見送られると期待感剥落で結構きついドル売りとなるかもしれません。

来週(10月26日の週)は相場が大きく動くと考える投資家が多いので十分気をつけなくてはいけません。

執筆者:フィスコアナリスト 田代昌之

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