ドル・円:ハト派発言が響き110円台も視野に

  • メインターゲット:110.67円(3/18、110.00円から少し引上げ)
  • サブターゲット:113.00円(3/18、113.00円と同じ)

テクニカル:心理的にはドル売り優勢の地合いに

ドル・円は、米アトランタ連銀総裁などの強気発言(4月にも利上げできる強気派=タカ派)を背景にドル・円はじりじりと上昇していたのですが、週初のイエレンFRB議長の慎重発言(利上げは慎重に=ハト派)を受けてドル買いの流れは一服。2月中旬以降のボックスレンジ(※1)上限の114.00円レベルも意識されて反落となりました。足元では、5日移動平均線や25日移動平均線が上値抵抗ラインとして意識されています。

期初の東京株式市場では、日経平均が売り優勢となり三角もち合いを下放れてしまいました。日本株のさえない推移がドル売りを誘発したことで、ドル・円もじりじりと下落しています。下に振れやすい相場展開のなか、今晩、米雇用統計の発表を迎えます。前哨戦でもある3月の全米ADP雇用報告が市場予想をやや上振れたことから雇用統計への期待感が高まってもいいのですが、イエレン議長のハト派発言で早期利上げ観測は後退しドル売りが優勢の雰囲気です。市場がこうした心理状態になってしまいますと、雇用統計の多少の上振れではポジティブな反応は難しいかもしれません。

地合い悪化のなか、雇用統計を材料に買いが入ったとしても、売り方の買戻しに留まり25日移動平均線が位置する113.00円レベルで上値が重くなりそうです。一方、売り優勢となった場合は112.00円台を下抜け111.00円台に突入する展開が想定されます。111.00円台に突入となれば来週辺りには、3月17日につけた足元の安値110.67円(2月中旬以降のボックス圏下限)を意識しておいたほうが良さそうです。今回のレポートでは地合いなどを考慮して、110.67円をメインシナリオ、25日移動平均線の113.00円をサブシナリオとします。

(※1)ボックスレンジ ある範囲の値幅の中で往ったり来たりしている状態(往来相場)のことです。市場で材料不足となったときなどにこうした状況が発生します。ボックスレンジのとき株価は上下動を繰り返すので、一定の価格まで上昇した後は下落し、下落した後は上昇するケースが多くなります。つまりボックスレンジでは逆張り投資が有効となるわけです。

ファンダメンタルズ:米雇用統計では時給の上昇率も注目

雇用情勢とインフレ見通しは米金融政策に大きな影響を与える2大要因とみなされています。イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長は、日本時間3月30日未明に行われた講演で、「海外のリスクは米経済情勢やインフレ見通しに影響を及ぼす可能性があり、利上げを慎重に進めることが適切である」と指摘しました。市場関係者の間からは「3月の米雇用統計が予想と一致した場合、米国株やドル相場に対する支援材料になってもおかしくないが、4月利上げの可能性が再び高まるとは思えない」との声が挙がっています。

4月1日の日本時間21時30分に発表される3月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数は前月比+20.5万人程度、失業率は4.9%と予想されています。市場では、非農業部門雇用者数が予想通りならば、雇用の拡大は当面続くことが期待できるとの見方が多いようです。ただ、3月の平均時給の上昇率が市場予想の前月比+0.2%を下回った場合、早期利上げ観測は後退しドルの上昇を抑える要因になるとの声も聞かれています。また、3月の平均時給の上昇率が予想通りでも、4月以降も賃金上昇が持続するかどうかを見極める必要があるため、ドル相場の上昇につながるかどうか定かではないとの見方も浮上しています。米雇用統計発表のタイミングはドル・円だけではなく主要通貨が大きな変化を示す傾向が多いことから本日の21時以降は要注目と言えます。





執筆者:フィスコアナリスト 田代昌之

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