ドル・円:不透明感が強く狭いレンジでの推移か

  • メインターゲット:111.30円(5/6、109.00円から引き上げ)
  • サブターゲット:109.00円(5/6、105.00円から引き上げ)

テクニカル:雲下限に頭をおさえられた展開に

ドル・円は、足元の上値抵抗ラインだった109円半ばを上抜き、110円台を回復しています。日足の一目均衡表では、雲への突入を試す展開を迎えています。遅行スパン(※1)は実線をクリアしており、転換線(※2)は基準線(※3)を上抜けています。つまり二役好転の状況ですので反発基調は強まりやすいと言えます。

ただ、2月高値121.49円を起点とした上値抵抗線をクリアしきれていません。雲下限とこの上値抵抗線が頭をおさえていますが、突破すれば75日移動平均線が位置する111円30銭レベルまであっさり上昇する可能性はあります。頭をおさえられた分だけエネルギーが蓄積されていますので、発散すると上に動きやすいと考えます。

今回ドル買いが進んだ背景を確認すると市場と米国政府の見通しに対するギャップが見られます(ファンダメンタルズにて)。こうしたギャップが存在する以上、積極的なドル買いは入りにくいかと思います。来週は26、27日に伊勢志摩サミットが開催されます。市場では、サミット前後で政府主導のなんらかの方針が発表されるのではないか?との思惑が浮上しています。一方、ルー米財務長官による円安ドル高牽制発言を考慮しますと現状の金融政策が続くのではないか?との声も聞かれます。不透明感が高い状況下、積極的なドル買いは手控えられるでしょう。今週のメインシナリオは75日移動平均線の111.30円サブシナリオは25日移動平均線の109.00円。つまり狭いレンジでの推移を想定します。

※1 遅行スパン
当日の終値を26日前に記入します。
「前日比」は当日の価格と前日の価格を比較したものですが、「遅行線」は当日の価格と26日前の価格を比較していることになります。

※2 転換線
過去9日間の最高値と最安値の中心値を結んだ線で、短期的な相場の方向性を示します。

※3 基準線
過去26日間の最高値と最安値の中心値を結んだ線で、中期的な相場の方向性を示します。
例えば、ドル・円相場の過去26日間の最高値が120円、最安値が100円だった場合、基準値は110円となります。

先行スパン1
基準線と転換線の中心を、26日先に先行させて記入します。
基準線は過去26日間の中心、転換線は過去9日間の中心ですが、先行スパン1はそれぞれの中心となります。

先行スパン2
過去52日間の最高値と最安値の中心を、26日先に先行させて記入します。
先行スパン1と先行スパン2に囲まれた部分を「雲」と呼びます。

ファンダメンタルズ:米国は年2回の利上げができるの?

米連邦準備理事会(FRB)が18日に米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨(4月26-27日開催分)を公表しました。FOMC参加メンバーの多くは今後入手される経済指標が今年4-6月期における経済成長の加速を示すものとなり、インフレ率と雇用が改善すれば、6月に利上げを行うことが適切になる公算が大きいとの認識を示しました。市場関係者の間からは「これまでは6月に追加利上げが実施される可能性を織り込んでいなかったが、FOMC議事要旨が公表された後は6月利上げの可能性は五分五分になった」との声が聞かれています。

また、一部報道によると、米ニューヨーク連銀のダドリー総裁は19日に行われた講演で「6月か7月の利上げ実施が正当化されるほど米国経済は力強い可能性がある」との見解を表明しました。経済統計の内容次第とのことですが、6月のFOMCで利上げを行う可能性があると指摘したのです。ダドリー総裁の発言は18日に公表されたFOMC議事要旨の内容におおむね沿うもので、市場関係者の間では6月利上げを織り込む動きが広がりつつあります。6月か7月に利上げが実施された場合は年内2回の利上げ実施の可能性もあるわけです。

ただ、年内2回の利上げは3月のFOMCで公表された金利見通しに合致しますが、市場関係者の一部は「6月か7月に利上げを行った後に経済情勢が変化し、追加利上げが難しくなる状況が出現する可能性は否定できない」と指摘しています。追加利上げ実施後もインフレ見通しや労働市場が改善を続ける保証はなく「利上げは年内1度だけにとどまる可能性は排除できない」との声も聞かれます。市場の見方とFRB関係者との溝が埋まらない限り不透明感は残りますので、今の水準から積極的なドル買いが進むことはなさそうです。





執筆者:フィスコアナリスト 田代昌之

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