ポンド・円:不透明感強く買いにくい状況

  • メインターゲット:133.40円(6/17、157.00円から引き下げ)
  • サブターゲット:140.00円(6/17、135.00円から引き上げ)

テクニカル:6月24日の安値を意識した展開か

足元のポンド・円は、5日移動平均線レベルで推移しています。24日の英国欧州連合(EU)離脱決定による急落で、133.31円まで叩き売られました。英国を代表する株式指数のFTSE100は24日前の水準を早い段階で取り戻したのですが、通貨安はなかなか解消されません。英国株が戻した理由は簡単です。ポンドが下落することで恩恵を受ける業種が買われたからです。株式市場はこうしたシーソーが働きますが、為替の場合そうはいきません。

英国経済、政治が混乱することで景気が減退する可能性があるので、ポンドが売られているのです。今後英国がEUからの離脱を成し遂げるためには2-7年ほど長い年月がかかると言われています。すなわち、不透明な状況が今後も続く可能性があることで、ポンドがなかなか買い戻されないわけです。

ポンド・円は長い下ひげ(※1)を形成していますが、今後この水準を下抜ける可能性は十分にあります。イングランド中央銀行が追加の金融緩和を実施すると、緩和することで→その通貨の量が大幅増→売り優勢というロジックが働くかもしれません。金融緩和実施は早くても夏頃ということですので、一気に売りが優勢となるとは考えていませんが、方向性は右肩下がりと考えていたほうが良さそうです。

メインターゲットは24日の安値133.31円レベルの133.40円とします。一方、英国とEUの交渉進展などなんらかの方向性が決まった際は買戻しが加速する可能性があります。この流れをサブシナリオとし心理的な節目である140.00円をサブターゲットとします。

※1下ひげ(下影陽線、下影陰線) 上昇を暗示するローソク足。売りを受けて下落したものの、売り一巡後は買い方に押され反発した形状。影(ひげ)が長ければ長いほど下落が強かったことを意味する。下落局面の株価が安値圏で下ひげを残すと大底を打ったと見られるケースが多い。

ファンダメンタルズ:英EU離脱に対する金融市場の反応は過剰?

欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う国民投票の結果が24日に伝わりました。ご存知の通り、英国がEUから離脱することが決まりました。事前予想では、残留派、離脱派ほぼ拮抗となっていましたが、市場では、残留を想定する投資家が多かったように思われます。理由は、英国民は金融市場を混乱に陥らせるような選択はしないという先入観があったのではないかと考えています。> 結果的に、離脱決定を受けて金融市場は大混乱となりました。当事者である英国通貨のポンドは、6月24日に133.31円まで急落しました。この日の朝方160円台をつけていましたので約27円の急落です。

今回の国民投票の実施を決めたキャメロン首相は辞意を表明することになりました。元々今回の国民投票はメリットが少なくリスクが無限大という割に合わないギャンブルだったと言えます。投票で残留になると踏んだキャメロン首相の目的は党内の引き締めと求心力の回復という小さな目的でしたが、もし離脱となると英国の損失はどこまで広がるか分からないという惨事を引き起こすというもので、なぜ実施するのか理解しがたいものです。

今回の一件は、安易に国民投票を使ってはいけないことを証明したものともいえます。今後英国はEUとの関係で現在の特権的な地位は認められなくなり、欧州でのプレゼンス低下により金融市場での存在感も失われることが予想されます。貿易と金融の両面からのダメージで、英国は長期的に衰退の道を辿るかもしれません。

一方、EU側は英国に対して厳しい態度で臨むと見られています。甘い態度を取れば、英国のように離脱する国が次々と出てくる可能性が生じるからです。EU側は離脱すると大変に不利益であるということを示す必要に迫られています。

今回の英国EU離脱で金融市場に大きな混乱が起きましたが、過剰反応だったのではないかとも思えます。英国のGDPは世界の4%程度にすぎず、またEU各国との関係はこれから2~7年程度をかけてじっくり構築されるためすぐには何も変わりません。国や金融機関に信用リスクが極限まで高まっていたリーマン・ショック時とは状況が全く違うのに、リーマン・ショック時以上の暴落は明らかに行き過ぎではないでしょうか?




執筆者:フィスコアナリスト 田代昌之

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