ドル・円:「ヘリコプター・マネー」に踊る為替市場

  • メインターゲット:108.00円(7/08、98.00円から引き上げ)
  • サブターゲット:103.00円(7/08、102.00円から引き上げ)

テクニカル:雲上限や75日線が位置する108.00円を意識か

ドル・円は、先週末の雇用統計発表後、瞬間的に99円99銭をつける場面がありましたが、参議院選挙で政権与党が勝利を収め政策への期待感が高まったことで反発となりました。日本株も上昇しており、久しぶりの株高、円安相場に突入しています。日足チャートでは、25日移動平均線を上抜いており75日移動平均線を意識した格好となっています。今回の反発は溜まりに溜まった円買いポジションの巻き戻しとの見方が強いのですが、「ヘリコプター・マネー」という言葉にプログラム売買が加速したような感じもします。ただ、結果として106円台を回復していますので、目先の円高警戒感は大きく後退しました
> 日足の一目均衡表では、1、遅行スパン(※1)は実線を下回る、2、転換線(※2)は基準線(※3)より下、3、雲下限より下を推移と三役逆転の売りサインが点灯中です。ただ、遅行スパンは実線に接近、転換線は基準線をほぼ捉える、そして、雲への突入を試すなど下げトレンドからの転換を試すような格好が見られます。まだ、トレンドが弱いことから失速する可能性は残っていますが、反発継続が期待できそうな状況でもあります。
> 反発が継続すると上値メドとして意識されるのは雲上限108.00円レベルでしょう。この水準は前述の75日移動平均線も控えているほか、99円02銭からちょうど10%円安に傾いた水準ですので、目先のターゲットとして意識されやすいでしょう。さすがに短期的な上昇に対する過熱感も浮上していることで、110円代回復は難しいと考えています。メインシナリオは108.00円としますが、買戻し一巡による反落となった際は、転換線や基準線が位置している103.00円が意識されるでしょう。こちらの水準をサブシナリオとします。

(※1)遅行スパン
当日の終値を26日前に記入します。
「前日比」は当日の価格と前日の価格を比較したものですが、「遅行線」は当日の価格と26日前の価格を比較していることになります。

(※2)転換線 過去9日間の最高値と最安値の中心値を結んだ線で、短期的な相場の方向性を示します。

(※3)基準線 過去26日間の最高値と最安値の中心値を結んだ線で、中期的な相場の方向性を示します。
例えば、ドル・円相場の過去26日間の最高値が120円、最安値が100円だった場合、基準値は110円となります。

先行スパン1
基準線と転換線の中心を、26日先に先行させて記入します。
基準線は過去26日間の中心、転換線は過去9日間の中心ですが、先行スパン1はそれぞれの中心となります。

先行スパン2
過去52日間の最高値と最安値の中心を、26日先に先行させて記入します。
先行スパン1と先行スパン2に囲まれた部分を「雲」と呼びます。

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ファンダメンタルズ:経済政策と金融政策のあわせ技

今週は、バーナンキ前FRB議長が来日したことなどから、「ヘリコプター・マネー」という言葉が、市場の話題となりました。10兆円の経済対策とこうした一段と踏み込んだ金融政策とのあわせ技に対する期待感が、円安、株高を演出しました。 ただ、一部報道によりますと、浜田宏一内閣官房参与(米イエール大名誉教授)は14日、ロイターとの電話インタビューにおいて、「ヘリコプター・マネー」の導入はインフレに対する歯止めがなくなるとし反対と述べました。一方、浜田氏は「財政政策と金融政策を近いタイミングで発動する協力は行われてもいい」との見方を示しています。 ドル・円は、14日午後の東京市場で節目の105円を突破し、15日は中国経済指標の予想上振れなどが影響して1ドル106円台を回復しています。つまり、6月24日の英国によるEU離脱ショック前の水準まで戻したわけです。ただ、市場関係者の間では、日本銀行が国債を直接購入して財政資金を提供するような金融政策は為替相場を目的としているとの印象を与えてしまうとの意見が多いようです。 また、「通貨安競争を煽ることになり、米国、中国などのアジア・欧米諸国の理解を得ることはできない」との声も聞かれています。市場関係者の間では、10兆円規模の景気対策に絡んだ国債増発と日銀による国債買い入れ増額が想定されているようですが、その時期は今月ではなく、10月頃との見方が多いようです。このため、7月の金融政策決定会合で適当な追加緩和策を導入することは難しいかもしれません。


執筆者:フィスコアナリスト 田代昌之

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