ドル・円:トランプ次期大統領への期待感先行でリスクオン

  • メインターゲット:108.00円(11/4、107.50円を引き上げ)
  • サブターゲット:102.50円(11/4、99.00円を引き上げ)

テクニカル:7月戻り高値107.49円突破を試す展開に

足元のドル・円は、買い優勢の展開となっています。トランプ次期大統領による政策が財政拡大につながるとの見方から、インフレ期待が高まり米長期金利は上昇。日米金利差の拡大を受けて、ドル買いが続いているわけです。日本からすると何も金融政策を打たずして円安に推移しているので、万々歳といったところでしょう。

日足チャートで見ますと、200日移動平均線を捉えており、目先のターゲットは7月戻り高値107.49円です。この水準を上抜くことができれば、昨年12月から続いていた中期的な下げトレンドが一巡し、反発基調が強まると考えます。一方、107.49円をクリアできなければ、中期的な反発は一巡を向かえドル買いは一服。75日移動平均線が位置する102.50円水準を意識した調整局面を迎えるでしょう。

具体的な政策を評価したドル買いというより、これまでの発言などに対する思惑的な売買の側面が強いことから、モメンタム(相場や投資家の勢い)には降らされやすいと考えます。トランプ次期大統領の言動(ファンダメンタルズにて)次第では、ドル売り圧力が強まる可能性もありますので注意は必要です。

今のところは、トランプ次期大統領を評価する動きが強いことから、7月戻り高値をやや上回る108.00円をメインターゲットとし、サブターゲットを102.50円とします。なお、現在は、106.50円辺りで推移していますから、101.20円からの上昇を考慮しますと短期的な上昇余地は小さいと考えています

ファンダメンタルズ:トランプ氏への警戒感が期待感に変わった瞬間

米大統領選挙では、共和党のトランプ氏が民主党のクリントン氏を破る結果となりました。市場では、トランプ大統領誕生は、不透明感の高まりということで「株売り、ドル売り、金買い」とリスクオフの地合いを想定していました。一方、クリントン大統領誕生は、オバマ政権の流れが続く、つまり不透明感払拭で、「株買い、ドル買い、金売り(いずれも短期的な見通しでしたが)」というリスクオンの見通しでした。蓋を開けてみますと、「株売り、ドル売り、金買い」「株買い、ドル買い、金売り」両方発生しています。

東京時間9日の午後、トランプ氏優勢との報道が続くと「株売り、ドル売り、金買い」のリスクオフの流れが強まり、日経平均は前日比で1000円下落、為替市場では、ドル・円が105円台から101円台まで円高ドル安が加速しました。6月24日の英国EU離脱決定に匹敵するネガティブなインパクトです。市場関係者の多くが、ドル・円100円割れ、世界的な同時株安を覚悟しました。

しかし、その日の欧米市場では、主要株価指数が切り返したほか、ドル買いが加速。そして、安全資産と見られて買われていた金は売り優勢となりました。僅か数時間で、世界の金融市場が真逆の動きを示したわけです。トランプ氏がこれまでの大統領選で掲げていた政策が材料視されたとの見方ですが、大きなポイントは、東京時間9日の夕方に行われたトランプ氏による勝利宣言だったと考えています。この勝利宣言で、トランプ氏はこれまでの暴言や不遜な態度は一切見せず、共和党、民主党などとの融和を伝え、クリントン氏に敬意を表し、全ての国との良好な関係を築く旨を告げ、社会インフラの整備を訴えました。つまり大統領たるべく態度を示したわけです。これまでの選挙戦で見せた言動は影を潜め、極めて紳士的な態度を見せたことに市場は驚愕しました。

「トランプ次期大統領もそこまで悪くないのではないか?」というフレーズがその瞬間、市場関係者の頭には浮かんだでしょう。警戒感から期待感に変わった瞬間はここだったと思われます。今後、具体的な政策が出るまでは思惑先行の地合いとなるでしょうが、市場関係者が持っているトランプ次期大統領への期待感と安心感は、「株買い、ドル買い」の大きな下支えとなりそうです。




執筆者:フィスコアナリスト 田代昌之

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