ドル・円:トランプ氏の行動に一喜一憂

  • メインターゲット:117.00円(1/6、117.00円と同じ)
  • サブターゲット:112.50円(1/6、111.70円を引き上げ)

テクニカル:雲上限をサポートとした展開に

足元のドル・円は112円台半ばまで下落する場面が見られましたが、イエレンFRB議長が利上げに前向きなコメントを発したことからドル売りは一服。足元では、115円前後まで戻しています。

日足の一目均衡表では、118.60円台でピークアウトを迎え、調整が続いていましたが、足元切り上がる雲上限に沿った反発が見られます。見事なまでのサポートラインといえます。仮に雲突入となっていれば、雲下限が位置する110円水準までの調整も視野に入るところでした。遅行スパン(※1)が実線レベルでもみ合っていることから、現在もそのリスクは残っていますが、雲上限がサポートとなったことで安心感はあります。

ただ、今晩、米大統領就任式(ファンダメンタルズにて詳細を説明)を控えていることで、ドル・円は大きく上下に振れる可能性はあります。期待感で118円台まで上昇し、警戒感から112円台まで下落し、現在は115円台です。大雑把に見ますと6円下がって3円戻していますので、現在はニュートラルといったところでしょうか。

市場が期待感先行の前のめりとはなっていないことは、ポジティブに捉えていいと考えます。市場では、約20分間の演説で具体的な政策は難しいとの見方が広がっています。デモ隊乱入などハプニングがなければ問題ないといった声も聞かれます。それだけハードルは下がったということですので、滞りなく就任式が終わるだけでもドル買いが入る可能性はあります。メインターゲットは基準線(※2)(115.50円水準)を上回る117.00円サブターゲットは足元の安値112.50円とします。

※1遅行スパン
当日の終値を26日前に記入します。
「前日比」は当日の価格と前日の価格を比較したものですが、「遅行線」は当日の価格と26日前の価格を比較していることになります。

※2基準線
過去26日間の最高値と最安値の中心値を結んだ線で、中期的な相場の方向性を示します。
例えば、ドル・円相場の過去26日間の最高値が120円、最安値が100円だった場合、基準値は110円となります。

転換線
過去9日間の最高値と最安値の中心値を結んだ線で、短期的な相場の方向性を示します。

先行スパン1
基準線と転換線の中心を、26日先に先行させて記入します。
基準線は過去26日間の中心、転換線は過去9日間の中心ですが、先行スパン1はそれぞれの中心となります。

先行スパン2
過去52日間の最高値と最安値の中心を、26日先に先行させて記入します。
先行スパン1と先行スパン2に囲まれた部分を「雲」と呼びます。

ファンダメンタルズ:トランプ氏の演説は21日午前2時からスタート

米国の大統領就任式で、トランプ氏が第45代アメリカ大統領に就任します。大衆主義者、ポピュリストとされるトランプ氏は様々な慣習を破ってきました。トランプ政権にはひとりもラテン系メンバーが採用されていません。これは過去30年間でみますと初めてのことです。また、「大統領がドルの水準に関して言及を避ける」という最近の伝統に反し、ウォールストリートジャーナル紙とのインタビューの中で、「ドルが強すぎるため、米国企業が中国の企業と競争することは不可能」と言及しました。中国当局による人民元安を抑制する措置に対しても、「見せかけの行動」だと一蹴しています。

一方、トランプ次期大統領が大統領顧問として起用することを発表したヘッジファンドのスカイブリッジ・キャピタル創業者スカラムッチ氏も、スイス、ダボスの世界経済フォーラム(WEF)年次総会で、「我々はドル高に注視する必要がある」との姿勢を示しました。そして、トランプ政権の成長を主軸にした政策で「経済が十分に強まり、ドル高にも耐えうる」と加えています。 > また、トランプ次期米大統領から財務長官に指名された投資家のスティーブン・ムニューチン氏は、昨日の上院財政委員会の公聴会において、トランプ氏のドルに関する言及が「長期的な見解ではない」と弁明しました。「米国ドルは長年にわたり最も魅力のある通貨で海外から米国に投資を呼び込んでいる」とし、「ドルの長期的な強さは重要だ」と強調しました。「強いドルは国益にかなう」との従来の方針に変更がないことを示唆したわけです。ただ、定番となっている文言を使用しなかったため、「ドル政策も今までの慣習を破るのではないか?」との懸念は完全に払拭はされませんでした。

政治経験ゼロの大統領誕生は、為替、株式市場に大きなインパクトをすでに与えています。東京時間21日午前2時からスタートする就任式演説を、市場関係者は緊張した面持ちで事細かに確認することでしょう。


執筆者:フィスコアナリスト 田代昌之

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